表現してこそ

とある美術館に行ってきた。

森陽香さんという方の企画展をやっていた。

 

森さんは、諸事情により手足が自由に動かないゆえに車椅子を使っている。絵を描くときは、なんと足を使う。足の指で鉛筆や筆を挟む。

森さんは、キリンや猫といった動物や植物、食べ物、赤べこなどの魔除けなどを描いている。どの作品も対象物の特徴がしっかりと捉えられ、そのものの本質が露わになっている。また、手を用いて、細部まで現物を再現するような精緻な画とは異なり、森さんの感性が縦横無尽に溢れており、作者の対象物への見方が強烈に出ている。

結果的に愛らしいと感じられるものが多かったが、もともとそれを狙っていたようには思えない。例えば桃やコーヒー豆など、写実的に描くのとは違い、森さんの色使い、塗り方、線が総合されて、陳腐な表現で恐縮だが、生命力がみなぎっている。

また、この日はご本人による作品解説のイベントがあり、解説のみならず、絵の実演まで見せていただくことができた。

絵が書くことが好きでたまらなく、個展を開くことになったことに対する感謝の気持ち、物の見方、生粋の芸術家の生の声に触れられて幸せな気持ちになった。

 

謙虚な姿勢で、好きなことを追求することが大切なんだと思わされた日だった。